婚姻関係破綻の認識と過失
弁護士が不貞慰謝料請求関係の相談を受けたときに、被請求者側の主張として多いが「相手夫婦の婚姻関係は既に破綻していた」というものです。
婚姻関係が既に破綻した後の不貞行為は「婚姻共同生活の平和」という侵害に対して保護すべき法益が既に存在しないので不法行為は成立しないという最高裁の判例(平成8年3月26日判決)があります。
すなわち、婚姻関係が破綻した後に肉体関係を持っても、他人の法益を侵害する行為自体がないことになるし、婚姻関係が破綻していなくても破綻していると信じたことに過失がなければ、故意あるいは過失があることを要件とする不法行為は成立しないことになります。
このような婚姻関係の破綻に関連する最高裁判所の判断が今月(令和8年6月)5日にありました。
原審は、離婚したと信じたことに注意義務違反がなかったとは言えないとして、被請求者の過失があったとして不法行為の成立を認めましたが、上告審は離婚したことに注意義務違反があったとしても、夫婦関係が破綻したことについて信じたことについて注意義務違反があったかの検討がなされていないとして原判決を破棄し原審に差し戻したものです。
被請求者にとっては心強い判決ですが、直接夫婦関係にない不貞相手にとっては、破綻を信じたことに過失がなかったことを立証するのは非常にハードルが高いことは変わりません。
相手が離婚していたと信じていたとしても、まだ間もない時は、信じるに至った過程、また少なくとも夫婦関係が破綻していることを信じるに至った過程が分かる証拠をしっかり残しておく必要があるでしょう。
この場合、共同不法行為者になる可能性のある肉体関係を持った相手の言動だけでは注意義務を果たしたというに足りないことは頭に入れておく必要があります。





